染めない生活

52歳で毛染めを止めました。

こんな仕事があったらおもしろい

津村記久子のお仕事小説、「この世にたやすい仕事はない」(新潮文庫)を読みました。

主人公の「私」は前職をストレスで止め、職安で紹介された仕事につくのですが、これがまた一風変わった仕事ばかりなのです。

 

ヘンな仕事いろいろ

 

最初の仕事は「みはりのしごと」。

自分は知らずに非合法なモノを預かったらしい作家の女性を、日々監視する仕事。

なんかちょっとミステリー風かと思いきや、この人の書く小説なのでどこか間が抜けています。

監視されている作家が炒めた白いソーセージを、ケチャップにカレー粉をかけたものに付けて食べていたので、今度やってみよう。

 

「バスのアナウンスのしごと」は、循環バスの車内で流す、近隣のお店のアナウンス広告を書くというもの。

「私」に仕事を教えてくれた若い女性に、ちょっと謎めいたところがあるのです。

 

私が好きなのは「おかきの袋のしごと」。

おかきの袋の裏に載せる、「世界の謎」とか「日本の毒のある植物」などの豆知識を書く仕事です。

ヴォイニッチ手稿」や「ジャージーデビル」、「ロアノーク植民地」とか、自分でも思わず検索してしまいました。

ちなみに「ヴォイニッチ手稿」は1912年にイタリアで発見された、未知の言語で書かれた文書で、いまだに解読されていません。

「ジャージーデビル」はアメリカのニュージャージー州で昔から目撃されている未確認動物。

「ロアノーク植民地」はアメリカのノースカロライナ州の島にあった植民地で、開拓者の行方が分からなくなったことから「失われた植民地」と呼ばれているそうです。

 

会社の人達もいい人で、話はほのぼのした感じで進むのですが、最後に思わぬところから思わぬ形で主人公の仕事を奪おうとする人が現れ、ひんやりしたものを感じます。

 

「路地を訪ねるしごと」はポスターを張り替えるだけなのですが、別の団体が張っているポスターもあって、こちらの団体は少々怪しげ。

 

やってみたい

 

やってみたいと思ったのが「大きな森の小屋での簡単なしごと」。

巨大な自然公園の中に建つ、小さな小屋の中で、博物館で使用するチケットにミシン目を入れる仕事をします。

いいな、こういうの。ヒマそうだけど。

 

仕事の環境はとても静かなわけですが、前任者が精神的におかしくなって辞めたと聞いたあたりから不穏なことが起こるようになります。

 

この短編も他のもそうですが、ミステリーやホラーじみた展開になることはなく、ちょっとユーモラスだけど普通の日常を描いています。

なんだか心の中を、ふるふると揺さぶられたような読後感です。